マルチスペクトル生育診断
人工衛星やドローンに搭載した特殊なカメラで圃場を撮影し、農作物の生育状況や病虫害、林地や緑地の診断を行うことが一般的に行われるようになってきています。温度湿度や日照、給水などの管理に通信やITを活用できるようになってきていますが、
特にドローンは衛星に比べて低空飛行で高精細な画像が撮影できるため、かなりの広大な農地でなければより有利と言える方法です。
🔳 マルチスペクトルカメラ
マルチスペクトルカメラ
通常のデジタルカメラやビデオカメラは、赤・緑・青の3色の光にそれぞれ反応する受光素子もったカメラを使って人間の目視に近い自然な画像・映像を記録します。ドローンにも通常搭載されています。
マルチスペクトルカメラはこのほかに近赤外線専用、赤と赤外線の境目専用、赤専用、緑専用といった特定の色に反応する複数のカメラを搭載しています。5つのカメラを搭載している場合、5つの画像が記録されます。
この他、撮影対象の温度に反応する遠赤外線カメラを搭載したドローンもあり、建物の壁の診断や害獣の調査などに利用されています。
🔳 生育画像診断
マルチスペクトルカメラが記録した複数の画像をデジタル処理し、その結果を再度画像として表示することで、農作物の生育状況、病虫害状況などを診断することができます。
農作物を含む植物は、葉緑素の量や活動量などで、光の色ごとに反射率が異なります。複数の色の反射の違いを計算し分析することで、植物に関する様々な情報を読み取るのがマルチスペクトル画像分析です。
例えば画像の中のある1つの点の値(光の強さ)について、近赤外線画像の明暗の値をNIR、赤画像の値をRとし、次のような計算をします。この計算結果を植生指数などと言います。
(NIR – R) ÷ (NIR + R)
画像全体のすべての点で同じ計算し、計算結果で新たな画像を作成します。最終的な診断画像は計算結果の値の大小に応じて色分けし、人が目で判断できるようにしています。次の画像の例では、緑部分は生育が良く、黄色~赤部分はあまりよくないことを表しています。
最終診断画像の例
上の式の分析と画像例はNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指数)と呼ばれ、農作物の生育診断に良く使用されます。使用する元の画像と計算方法の組み合わせでこの他にも様々な診断方法・診断画像があります。
主な植生指数の例
🔳 画像診断の活用
生育状況の診断画像で単純に農作物の生育の良し悪しを診断できますが、良し悪しの直接の原因までは判断してくれません。他の植生指数と組み合わせたり、実際の圃場の状況(入出水の状況、耕起時の状況など様々)の情報と組み合わせて、複数の観点から診断する必要があります。
例えば植生指数の結果画像に筋状にムラができる場合、トレイ単位で作物苗の生育状況が異なり、のちのちの生育状況が筋ムラとして観察できることがあります。同心円状にムラができた場合、圃場整備や耕起時に同心円状の作業を行い、作業の結果土質に差が出てしまい、同心円状のムラが観察されたことがあります。苗の生育の均一化や耕起作業時に配慮することで、翌年の生育均一化・収量増加に生かした例があります。
耕起作業が原因の土質ムラが観察された例
また水田の入水側と出水側での生育の違い、元々の土質の違いなども診断画像に現れることが多いです。
🔳 可変施肥
診断の結果、場所によって生育状況に大きな違いがみられる場合、生育の悪い範囲には多めに追肥するといった対策が必要になる場合があります。
画像診断の際に、小さな点の集まりである診断画像を、比較的大きな範囲で数種類の色分けをした画像を作成することができます。この画像を活用すると、肥料の散布時に散布量を調整する(可変施肥)ことが容易になります。
自動航行ドローンによる自動散布では、この画像をデータとしてドローンに登録することで、自動的かつ正確に可変施肥を実現できます。弊社では診断と散布の双方を委託いただくことで自動可変散布の作業が提供可能です。もちろん調査と施肥マップの作成のみでも承ります。
🔳 圃場面高低差診断
画像診断の活用例として、圃場の高低差を画像で表し均平作業に利用する方法があります。マルチスペクトルカメラの画像を使用する必要はありませんが、自動航行の測量ドローン(マルチスペクトルカメラ搭載ドローンでも可能)により圃場面のわずかな高低差をデータ化・可視化できます。測量ドローンは撮影地点の位置(緯度経度)と高さ(標高や地上高)をセンチメートル単位の精度で画像と共に記録しており、地上の起伏を精密にデータ化できます。
圃場表面の高低差画像例
診断画像を活用することで、水田の理想的な均平作業や、畑作地の湛水防止などの対策に利用できます。
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